神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
まさかと思ったが、聞き間違いではなかった。

「令月…お前、令月なんだな…!?」

俺は、慌てて鉄格子にしがみついた。

…そんな俺の背後で。

「今の痛かったぁぁぁ」

派手に後頭部をぶつけたシルナは、まだ痛みのあまり喚いていた。

「うるせぇぞ、この馬鹿シルナ!」

「えぇぇぇ!?酷い!今、火花が散ったんだよ。チカチカって、火花が!」

「今、それどころじゃないんだよ!」

「えっ?なん…。…えっ!令月君!?」

派手にぶつけた後頭部を、さすさすと擦りながら。

シルナは、鉄格子の向こうに令月を見つけた。

「良かったー!令月君、ここにいたんだね!」

「…」

「こんなところに閉じ込められて…!今出してあげるから!」

シルナは杖を取り出し、魔法で鉄格子を破壊しようとした。

しかし。

「待って」

他ならぬ令月自身が、それを制した。

…え。

「な、なんで…?」

「どうして来たの?…何をしに?」

何をしにって…そんなの。

「決まってるだろ。お前を助けに来たんだよ」

俺は、令月の問いかけにきっぱりとそう答えた。

そして。

「お前達を助けに来たんだ。一緒に、ルーデュニア聖王国に帰るんだよ」

「僕は帰れない」

令月も、俺と同じくらいきっぱりと…はっきりした口調で言った。

…。

「どっ…どうして?令月君。こんなところにいなくて良いんだよ。一緒に帰ろう。イーニシュフェルト魔導学院が、君の居場所なんだよ」

シルナが必死に訴えた。

その通りだ。

ここは令月にとって、過去の場所だ。今の居場所じゃない。

今の令月は、『アメノミコト』の暗殺者じゃない。

イーニシュフェルト魔導学院の生徒だ。

かけがえのない…俺達の仲間じゃないか。

「帰れない。僕のことは置いていって。君達だけで早く帰って。見つからないうちに」

「…令月君…」

「これは君達には関係ない。僕の問題だから」

「…」

あまりにも頑なな令月の態度に、シルナは思わず、言葉を失っていた。

…あぁ、そうかい。

関係ないだと?お前の問題だと?

「…お前の問題なら、俺の問題にもしてやるよ」

無関係だと突き放そうとしても無駄だからな。

だって、俺達はもう仲間なんだから。

仲間の問題なら、それは自分の問題でもある。そうだろ?

「令月。お前だって、マシュリの心臓を取り戻しに、冥界に一緒に行った仲だ」

「…」

「だったら、こういう時、俺達が何を言っても諦めないってことくらい分かってるだろ?」

あの時と同じだ。

絶対、手ぶらでは帰らない。

何か何でも…一緒に帰るのだ。

「…君達は本当に…。…愚かだよ」

そうか。それはよく言われる。

その程度で俺が傷つくと思ったら、大きな間違いだぞ。
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