神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
奇しくも、この時。

アジトの別の地下室で、ジュリスとベリクリーデもまた、すぐりを説得していたのだ。

令月もすぐりも、互いに同じことを言っていた。

自分はいいから。自分が犠牲になるから、その代わりに相棒を助けて欲しいと…。

…置いていける訳ないだろ。

何が何でも、一緒に帰るのだ。

「そんなことして、すぐりが喜ぶと思うか?お前を犠牲にして自分だけ帰って、それですぐりが満足すると思うのかよ?」

「…それは…」

ないな。お前だって分かってるだろ。

自分のせいで、令月だけ『アメノミコト』に残ることになったと、後になって知れば。

間違いなく、すぐりは再び、『アメノミコト』に出頭するだろう。

なんでそんなことが分かるのか、って?

…当たり前だろ。

連れ去られたのが、もしシルナだったら…俺だって同じことをしただろうから。

「お前達は相棒だろ。パートナーだろ。どちらかだけ、じゃない。一緒にいるんだ。どんな時でも」

俺とシルナがそうであるように。

決して離れ離れになってはならない。

ましてや、誰かの悪意によって引き裂かれるなんて。

お前達はもう、互いを憎み合う必要はない。

互いに認め合い、高め合っていく仲なんだから。

「一緒に帰るんだ、令月。お前と、そしてすぐりも一緒に」

本当はお前だって、そう望んでいるんだろう。

「だけど…。でも、僕が勝手なことをすれば…」

「何だよ?まだ何か文句があるのか」

「『アメノミコト』を敵に回すことになるんだよ。あの頭領…。鬼頭夜陰のことも…」

あぁ、なんだ。そんなこと心配してたのか。

「あのな…。今更、俺たちがそんなモノを恐れると思ったか?」

何せ俺達は、冥界の神龍族にも、それどころか天使相手にも反旗を翻し。

アーリヤット皇国とも喧嘩したし、キルディリア魔王国とも喧嘩した。

そこにプラス、『アメノミコト』が加わったところで。

今更ビビる訳ないだろ。

…それにしても、改めて考えると敵が多いな。俺達。

その分味方も多いから、問題なし。

「仲間を助ける為に必要なら、神様相手にだって唾を吐きかけてやるよ」

それに比べりゃ、ただの人間に過ぎない鬼頭夜陰がなんだと言うのか。

怖くも何ともないね。

「…そうだよ、令月君」

シルナもまた、手を差し伸べてそう言った。

いつもの、柔らかく、穏やかな口調だった。

「君もすぐり君も、私の大切な生徒なんだから。帰ってきてもらわなきゃ困るよ」

その通り。

イレースなんて、既に帰ってきた時に受けさせる補習の準備までしてたからな。

連れて帰る気満々じゃん。

「お前はもう…この場所に縛られる必要はない」

その悪夢は、もう終わったのだ。

お前もすぐりも、一緒に、光の下を生きていくんだ。

どちらかが欠けてもいけない。

「一緒に帰ろう。みんなで、俺達の居場所に」

「…羽久…」

令月は、差し伸べた俺とシルナので、じっと見つめ。

そして。

「…うん。僕も帰りたい。帰っても良いのなら…」

「良いに決まってるだろ」

「…そっか。…君達は…最初からそうだったね」

珍しく、ふっと少しだけ笑って。

差し伸べた手に、触れようとしたその時。





「…困りますね。勝手なことをされては」



背後から、冷たい声が響いた。
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