泣ける程に愛してる。
そして、いつも通り業務をこなしていると「咲。」と呼ばれ、ふと見ると啓人がこちらに向かって歩いて来ていた。
「この作業指示書頼めるか?ちょっと枚数多いんだけど。」
「うん、分かった。」
そう言って、啓人が差し出す10枚程の作業指示書をわたしは受け取った。
すると、そのやり取りを見ていた啓人の同期である林課長がニヤニヤしながら「おぉ〜新婚さん。今日、朝から一緒に出勤して来たんだって〜?」と茶化してきた。
「何だよ、同じ家に住んでんだから普通だろ。」
啓人が面倒くさそうにそう言うと、林課長は「いやぁ、女子社員たちが言ってるの聞いたからさ。ラブラブだなぁ〜って思って。」とニコニコしながら言った。
「いいから、お前は仕事しろ。」
「はい、失礼しました!イケメン部長!」
そう言って、自分のデスクに戻って行く林課長。
啓人は「じゃあ、よろしくな。終わったら、俺のデスクに置いといて。」と言い、わたしが「うん。」と返事をすると、事務所を出てどこかへ行ってしまった。
わたしは啓人に頼まれた作業指示書を次々と処理していき、最後の一枚を終えると、ちょっと息抜きの為に事務所を出て飲み物を買いに自販機がある休憩室へと向かった。
すると、休憩室には先客が居るようで、入る手前で女性社員の声が聞こえてきた。
「今日、朝から蓮見部長と小森さん、一緒に出勤してたの見た?」
「見た見た。あれ、わたしが蓮見部長の妻ですよ〜ってアピールじゃない?」
「だよね〜。でも、蓮見部長が小森さんと結婚するなんて意外だったなぁ。」
「分かるぅ!きっと、大人しくて何でも言うこと聞いてくれそうだからじゃない?」
「あー、それはあるかも!」
わたしはその会話を聞き、飲み物を買うのを諦め、事務所へと引き返した。
そうだよね。そりゃあ、そう思われて当然だよね。
だって、あの啓人にわたしが選ばれるなんて、契約結婚じゃなければ有り得ない話なんだから。