泣ける程に愛してる。

啓人の腕の中は温かくて、優しい温もりが伝わってきた。

初めて抱きしめられてドキドキするはずが、啓人に包まれて居心地が良く感じている自分がいた。

「咲だから話せたんだと思う。だから、謝る必要はない。謝らなきゃいけないのは、俺の方だ、、、。咲の大切な時間を、、、俺は奪ってるんだから。一年あれば、良い男に出逢って、その先には結婚があって、子どもを授かれる未来があるはずなのに、、、俺は、、、」
「ねぇ、啓人。」

わたしがそう呼ぶと、啓人は切なげな声で「何?」と言った。

「わたし、、、啓人に時間を奪われてるなんて思ってないよ?むしろ今、毎日が楽しくて、いつも感じてきた寂しさが無くなった。それは、啓人がそばに居てくれるから。ありがとう、、、たった一年だけでも、わたしは啓人の妻になれて良かった。」

啓人はわたしの言葉に抱き締める手に力を込めると、「俺の方がありがとうだよ。」と言った。

わたしは啓人の背中に腕を回し、啓人の胸に頬を付けた。

いつもわたしを心配してくれていた啓人にも、大きな傷があることを知り、わたしはその傷を少しでも癒せないかと思った。

でも、契約結婚のわたしたちには時間に限りがある。

このまま、啓人のそばに居られたらいいのに、、、

一年なんて制限がなくなればいいのに、、、

気付けば、わたしたちはいつの間にか抱き合ったまま眠り付いていた。

まるでお互いの存在を、温もりを求め合うように。

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