泣ける程に愛してる。
「じゃあ、これ、朝イチで出して来るな。」
啓人はそう言うと、離婚届を持ったままソファーから立ち上がった。
そんな啓人の後ろ姿を見て、わたしは急いで追いかけ、勢い良く後ろから啓人を止めるように抱き締めた。
「、、、咲?」
「行かないで、、、」
「でも、、、」
「啓人、ズルいよ。あんなにわたしに喜びや幸せを与えてくれて、、、それなのに、この一年ありがとうだなんて、、、」
「だって、これは俺の一方的な気持ちから始まったことだから、」
「確かに最初はそうだったかもしれない!でも、、、啓人と一緒に過ごしていくうちに、わたしは啓人に惹かれていった、、、。今日のこの日が近付くにつれて、啓人と離れたくない気持ちが強くなっていった、、、」
声を震わせながら、わたしは必死に自分の気持ちを啓人にぶつけた。
すると、離婚届を持つ啓人の手に力が入り、離婚届がくしゃくしゃになった。
「啓人、、、行かないで、、、啓人まで、わたしを一人にするの?わたしはもう、、、好きな人に置いて行かれたくない。わたしは、、、ずっと啓人のそばに居たい。啓人の妻を、、、やめたくない!」
わたしがそう言うと、啓人はクルッと身体の向きをこちらへ向けると、わたしを抱き締めた。
そして強く強くわたしを抱き締め、泣いていた。
「でも、、、俺は、子ども出来ない身体なんだぞ?」
「分かってるよ?でも、結婚したからって、子どもが全てじゃない。二人きりでも家族に変わりはないよ。そうでしょ?」
すると、わたしの言葉に啓人は泣きながら「咲には、、、幸せになって欲しいと思ったから、、、」と言った。
「子どもがいないと幸せじゃないの?わたしは、啓人が居てくれれば、それだけで幸せだよ?わたしは、、、啓人がそばに居てくれないと、幸せじゃないの。」
「咲、、、」
「なに?」
「俺も、、、咲が居ないと幸せじゃない。別れたくない、、、」
そう言って、啓人は離婚届をくしゃくしゃに丸めて床に叩きつけると、わたしを見つめ「咲、、、愛してる。」と言って、わたしの唇に唇を重ねた。
初めての啓人との口付けは、お互いの涙で塩っぱくて、でも愛に満ちたキスだった。