上司と始める秘密の子作り契約?!~あなたのことを好きになってもいいですか~
 思わず声を上げたあかりを不破は真っすぐに見つめる。

「本気だよ。天野は本気じゃないの?いざ目の前に突き出されたら覚悟なんかなかったか?」

「そっ――」

「どこのだれかわからない、本当か嘘かわからない言葉で記された書類で判断してそれをわざわざ金で買う、それを望むならそれでもいいよ。天野にだって選ぶ権利はある、選ぶのは天野だ」

 掴まれた手をぎゅっと強く包まれてあかりの胸は高鳴る。ドキドキと胸が躍るように跳ね上がる、この心拍数の乱れは何の感情だろう。

 あかりはとてつもなく興奮していた。目の前の不破に、不破から告げられる言葉に。

 ――選ぶ権利は自分にある。

「体外受精か自然妊娠か、天野が選べ」

 腕を引かれて店を出て、立ち止まった不破が長い指でエレベーターのボタンを押した。扉が開いて不破が中に入る、あかりもそれに続いた。四角の箱の静かな空間の中で不破の低い声が言う。

「部屋は十二階、ロビーは一階。天野が押せよ」

 壁にもたれた不破はじっとあかりを見ていた。あかりもその目をじっと見つめ返す。

 ボタンを押そうとする指先が震える、その震える指先がボタンを押すとエレベーターの扉が動いて二人はその静かな箱に閉じ込められた。
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