Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「あんたら。誰かね。」
老婆は不審者を見るような目でふたりを見上げた。
「お忙しい時間に申し訳ありません。私、こういう者です。」
桂木が警察手帳を掲げた。
「ああ・・・。警察の人がなんの用?」
訝しげな視線を受けながら、桂木は小夜の隣人である、耳の遠い三笠ヤエに、大きな声で尋ねた。
「三笠さんの隣に住んでいる、下条小夜さんについてお尋ねしたいのですが。」
「ああ・・・。小夜ちゃんのことね。小夜ちゃんがどうしたの?」
小夜の名前を出した途端、ヤエの表情が和らいだ。
「実は下条さんがある事件に関わっている容疑があります。下条さんのある日の行動をお聞きしたいのですが。」
「小夜ちゃんが事件に?あんなに優しい子が?なにかの間違いじゃないのかい?小夜ちゃんは自分の作ったおかずが余ったら、いつも私にお裾分けしてくれるような子だよ?」
「・・・・・・。」
小夜が優しいのは一緒に暮らしていた俺が一番良く知っている。
思わずそう言いそうになり、桂木は口をつぐんだ。