Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

個室でその会話の一部始終を聞いていた小夜は、体中の熱が奪われ氷のように固まった。

膝がガクガクと震え立っていられず、おもわずしゃがみ込み、両手で顔を塞いだ。

私のなけなしのお金は、広之の新しい仕事の為の開業資金として使われたんだ・・・

広之は私を捨てて、他の女と幸せになる道を選んだんだ・・・

情けなくて、悔しくて、涙も出ない・・・

真っ青な顔をしながら、やっとのことで個室から出てきた小夜に、やはり隣の個室でその会話を聞いていたであろうみのりが声を掛けた。

「小夜・・・落合先輩と別れたって、本当?」

「・・・・・・。」

「本当なのね?」

小夜はかろうじて頷いた。

「小夜の馬鹿。どうして私に相談してくれなかったの?」

「だって・・・そんな話、恥ずかしくて言えないよ。」

みのりは大きくため息をついた。

「よし。今夜はふたりで二次会しよう!愚痴でもなんでも聞くから。」

みのりが小夜の肩を抱き、励ますように言った。

「小夜。あんたは悪くない。何も悪くないよ。ただ付き合った男がクズだっただけ。」

その言葉に小夜の目からようやく涙がこぼれた。

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