Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「死にたいのか?」
背中から聞こえた男の声に小夜はびくりとし、そして固まった。
風の音が聞かせた幻聴だろうか?
それとももう自分には死神が付いているのだろうか?
「死にたいのかって聞いてんだよ。聞こえねえのか?生きる気力ばかりか耳まで聞こえなくなっちまったのか?」
恐る恐る振り向くと、黒いシャツに濃いグレーのスーツを着た男が、煙を燻らす煙草を指に挟みながら、小夜を睨み付けていた。
背丈は高く、端正な顔をした男だ。
しかしその狼のような眼は、獲物を狩るかのように獰猛な光を宿していた。
小夜は心の中を覆う冷えた感情を口にした。
「はい。死にます。」
「・・・・・・。」
「貴方にご迷惑はかけません。見なかったことにして、どこかへ行ってくれませんか?」
小夜は震える声でそう告げた。