Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「お前、名前は?」
男に問われ、小夜は小さくつぶやいた。
「小夜・・・下条小夜です。」
ふいに男の目から発せられる殺気のようなものが消え、その表情が和らいだ。
「なにか旨いものでも食うか?どうせ何も食ってねえんだろ?腹が減ってると碌でもないことしか考えないもんだ。ほら、食いたいものを言ってみろ。」
その言葉で、ビルから飛び降りる直前までの緊張の糸がぷつりと切れ、小夜は脱力した。
男の言うとおり、小夜はここ数日何も口にしていなかった。
「・・・・・・牛丼が食べたいです。」
「ははっ。随分安上がりだな。そんなもんで良ければ俺が奢ってやる。付いてこい。」
小夜はとまどいながらも、背中を向け先を歩く男の後を追った。