Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
金の話になった途端、男の表情が険しくなった。
「・・・いくら、騙し取られた?」
「100万。消費者金融で借りました。」
「・・・・・・。」
「・・・それだけならまだ我慢出来ました。男なんてまた探せばいい。お金だって頑張って働けばなんとかなる。でも・・・」
そこから小夜は無言になった。
これ以上話したら、堪えている感情がまた溢れ出てしまう。
痺れを切らした男が問いただした。
「でも、何だ?」
小夜は意を決して話し出した。
「・・・赤ちゃんがお腹にいたんです。私の中に確かにいたんです。産みたかった・・・。産んで一緒に生きてみたかった・・・。けど・・・私が重い荷物を運んだりしたから・・・いなくなっちゃった・・・」
赤ちゃんという言葉を発した途端、小夜の涙腺は崩壊した。
この手で抱いてあげたかった。
ミルクを飲ませてあげたかった。
その成長を見守ってあげたかった。
私、知らない人の前でなにやっているんだろう・・・そう思うのに、涙が溢れて止まらない。
男はただそれを黙って眺めている。
きっと情けない馬鹿な女だと思われているに違いない。