Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
小夜は帰り支度を終えると、急いで店を後にした。
帰り際、店長から「面倒ごとは勘弁してよ?」と釘を刺された。
喫茶『檸檬』のドアを開けると、果たして桂木と野間は窓際の席で小夜を待っていた。
野間はスマホ画面を見ていたが、桂木はじっと窓の外を眺めていた。
「お待たせしてすみませんでした。」
小夜がふたりの席に近づくと、野間が「いえいえ。」と柔和に笑いながらスマホから目を離し、真向かいの席へと促した。
小夜は桂木の強い視線を感じ、目をそらした。
この喫茶店の名物であるレモンティーを頼み、小夜はふたりの男を見比べた。
野間が親しみやすそうな小役人なら、桂木は威圧感で言質を取る武闘派といったところか。
それくらいふたりの雰囲気は異なっていた。
いや、だからこそコンビを組んでいるのかもしれない。
野間が胸ポケットから一枚の写真を取りだした。