Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
翌日――
桂木は野間と被害者である落合の元職場へ聞き込みに行った。
「まあ、いけ好かない奴でしたね。」
落合の同僚だった吉田が吐き捨てるように言った。
「死人に唾吐きかけるような真似はしたくないですけど、あいつはマジ最悪な奴でした。一緒に仕事をしなきゃならないのが苦痛でしたよ。」
「それはどのような点で?」
桂木の問いかけに、吉田が口をへの字に曲げた。
「人の手柄を平気で横取りするし、自分のミスは人に押しつける。酒の席ではセクハラもどきのことをする。あいつは狡いんですよ。セクハラになるかならないかのギリギリを狙うんです。」
「ギリギリとは?」
「狙った女の子の膝に水をこぼして、お手拭きで拭くんです。わざとらしくて見ていられなかったな。な?服部さん。彼女もそういう被害に遭ったひとりなんです。」
吉田の隣に座ったボブカットの服部という女子社員も小さく頷いた。
小夜とは違うタイプだが、やはり童顔な女だ。
落合は童顔の女がタイプだったのだろうか?
「お手拭きで拭く真似をしてスカートに手を入れてこようとするんです。私以外にもそんなことをされた女子社員が沢山いて、みんなで職場のセクハラ委員会に訴えたんです。実家の家業を継ぐ為に自己退職という形になってますけど・・・本当はセクハラでクビになったんです!」
おとなしそうな見た目に反して、服部は声高にそう叫んだ。