Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
晴海埠頭に着き、運転席から降りた桂木の後を追うように、小夜は助手席のドアをあけ外に出た。
「わあ・・・綺麗。」
真っ暗な海の向こうに沢山の灯りが点滅している。
赤、白、緑、青・・・
高いビル群の谷間からは、赤色と白色に光った東京タワーがその存在感を際立たせていた。
人工的な光なのに、幻想的で不思議な気分・・・
春の風が心地よい。
これが海の匂い?
「東京で生まれて、東京にずっと住んでいるのに、こんなに綺麗な場所に来たのは初めて。」
「そうか。」
「桂木さんは沢山の初めてを私にくれる。」
赤く点滅しながら海を渡る小船を眺め、小夜はそうつぶやいた。