Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
「・・・覚えていません。とにかく図書館の近くのスーパーです。」
覚えているはずがない。
それは小夜が虚言を吐いているからだ。
桂木は小夜の嘘を細かく指摘していく方針を固めた。
「その包丁の値段は?」
「・・・多分、千円くらいだったと・・・。」
「その後の行動を出来るだけ細かく話してくれ。」
小夜の瞳が左右に動いている。
前もって考えてきた言葉を思い出しているのだろう。
「広之・・・落合さんの家まで歩いて向かいました。」
「下条さん。あんたは被害者に着信拒否され、連絡を取れない状態だった。なのにどうして被害者の新しい住所を知っていた?」
「それは・・・」
小夜が口ごもった。
「知り合いから聞き出しました。」
「知り合いとは?」
「・・・いえ・・・間違えました。・・・落合さんと私の家はそんなに離れていません。実は雑司ヶ谷の近くで落合さんを見かけたことがあったのです。そのときに落合さんの後をつけて住所を知りました。」
「下条さん。いまあんたは知り合いから聞いたと言ったよな?どうしてそんな嘘をつこうとしたんだ?」
「・・・・・・。」
それは小夜、お前が落合広之のマンションなど行ったことがないからだ。