true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
「加東君。深澤さんのサポートを宜しくね」
「はい、深澤さん、宜しくお願いします」
「ご指導宜しくお願いします」
「少しずつ慣れてくれたらいいよ。私の秘書と言っても、自分で管理はするから、事務所内の事務的なことを慌てずに覚えてね」
ニコッと笑う片桐さんは、推しマスターと勘違いしていた頃と変わらない。

「加東君。俺のスケジュール管理は、しばらく頼むよ」
「はい。共有しながら、深澤さんに引き継いでいきます」
「昨日お願いしてた資料は出来そう?」
「それなら出来てます」
「ありがとう。事業再生の依頼だから、加東君も目を通して勉強しなさい。俺は自分の部屋に戻るから、もう一つの依頼も宜しくね」
「はい、分からない事はお聞きします」

片桐さんの言葉に違和感を感じた。
私と加東さんとの距離感の違い。
勿論、今日からだから当たり前なんだろうけど。
何だろう・・・何かが違う。

「加東君、小巻さんに珈琲を頼んでいるんだ。来たら俺に声を掛けて。深澤さん、こまさんの奥さんが来たら紹介するね。私の数少ない、頭の上がらない人だ」
「はい」

分かった・・・
片桐さんは、私と話す時は、自分のことを『私』、加東さんの時は、『俺』って言ってる。
きっと、無意識に私はお客様扱いなんだ。
早く片桐さんに認められないと・・・
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