新海に咲く愛
山崎が海斗のアパートに到着すると、二人はすぐに作戦を練り始めた。
テーブルには奈緒から送られてきたメッセージと住所が記された紙が置かれている。

「まず確認だけど、彼女の旦那ってどんな奴なんだ？」

山崎が尋ねると、海斗は少し言葉を選びながら答えた。

「中村貴弘っていう大手食品メーカーの部長で、次期社長候補らしい。でも、それ以上に……彼女を支配してるDV野郎だ。」

山崎は眉をひそめた。

「なるほどな。そういうタイプは厄介だぞ。外面がいい分、周囲から疑われにくいし、下手に刺激すると逆上する。」

「だからこそ慎重にやらないといけないんだろ？
でも……俺、奈緒さんを見捨てるなんてできない。」

その言葉に山崎は小さく頷いた。

「わかったよ。俺も協力する。ただし、安全第一な。」

二人は具体的な救出プランを立て始めた。


その頃、奈緒は家の中で静かに座っていた。
古い携帯電話を握りしめながら、自分がしたことの重大さに怯えていた。

「もし貴弘に見つかったら……」

その恐怖が頭から離れない。
しかし、それでも彼女はもう限界だった。
このままでは自分自身が壊れてしまう――そんな感覚すら覚えていた。

リビングには貴弘の足音だけが響いている。　その音が近づくたびに奈緒の心臓は跳ね上がった。
彼女は息を殺しながら、その場でじっとしているしかなかった。
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