新海に咲く愛
夜になり、海斗と山崎は中村家へ向かった。
車内では緊張感が漂っていた。

「お前、本当に大丈夫か?」

運転席の山崎がちらりと海斗を見る。 

「ああ、大丈夫。でも絶対失敗できない。」

「そりゃそうだ。でも無茶すんなよ。俺もいるんだから。」

車が中村家の近くに到着すると、二人は慎重に周囲を確認した。大きな邸宅には明かりが灯っており、中には貴弘がいることがわかった。

「旦那さん、まだ起きてるっぽいな。」

山崎が小声で言うと、海斗も頷いた。

「でも奈緒さんも起きてる可能性ある。このタイミングしかない。」

二人は静かに敷地内へ侵入した。
そして裏手の窓から中の様子を伺うと、リビングで貴弘が酒を飲んでいる姿が見えた。
その奥には薄暗い部屋で一人座る奈緒の姿もあった。



海斗と山崎は慎重に裏口から家の中へ入った。
そして、小声で奈緒を呼ぶ。

「奈緒さん……聞こえますか?」

その声に気づいた奈緒は驚きながらも振り返った。
そして目の前に立つ海斗と山崎を見ると、一瞬涙ぐんだ。

「……どうして……?」

「助けに来ました。」

海斗は真剣な表情で言った。
「もうここにはいなくていいんです。一緒に逃げましょう。」

奈緒は一瞬躊躇した。
しかし、その時リビングから貴弘の声が聞こえてきた。 
「おい! 誰かいるのか?」

その声に奈緒は恐怖で震えた。
しかし同時に、「ここから逃げたい」という気持ちが強く湧き上がった。


三人は急いで裏口へ向かった。
しかし、その途中で貴弘が現れた。

「お前ら何してる!?」

貴弘は激怒しながら近づいてきた。
その目には狂気すら宿っている。
しかし、その瞬間山崎が立ちはだかった。

「警察だ! これ以上近づくな!」

その一言に貴弘は一瞬怯んだ。
しかしすぐさま怒鳴り返す。

「ふざけるな! これは俺の家族の問題だ!」

その間にも海斗と奈緒は外へ逃げ出した。
そして車へ乗り込み、その場から離れることに成功した。


車内で奈緒は震えながらも、小さく呟いた。

「ありがとうございます……本当に……」

後部座席からその言葉を聞いた海斗は、
「もう大丈夫です」と優しく答えた。

そして山崎も、「これから安全な場所へ行こう」と付け加えた。

三人は警察署へ向かい、その後奈緒は保護施設へ案内された。ようやく彼女は自由への一歩を踏み出すことになった。
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