新海に咲く愛

6.解放

警察の保護下で安全を確保された奈緒は、ようやく貴弘から物理的には解放された。
しかし、心の中にはまだ彼への恐怖が根強く残っていた。
警察署で山崎と話し終えた後、海斗がそっと声をかける。

「奈緒さん、大丈夫ですか？」

奈緒は小さく頷いた。

「……ありがとうございます。でも……私、本当にこれでいいのかわからなくて……。」

その言葉に海斗は少し考え込むような表情を浮かべた後、優しく答えた。

「これでいいんです。奈緒さんがここから自由になるためには、まず自分を守ることが必要です。それに……俺は奈緒さんに笑ってほしいんです。」

その言葉に奈緒は目を伏せながらも、小さく微笑んだ。


奈緒が警察の保護施設で生活を始めて数週間後、山崎から連絡が入った。　
「奈緒さん、離婚手続きを進める準備はできていますか？ これ以上貴弘と繋がりを持つ必要はありません。」　

その言葉に奈緒は少し戸惑いながらも、
　
「はい」と答えた。

離婚――それは彼女にとって自由への鍵であると同時に、大きな不安を伴う決断だった。

弁護士との面談が始まり、貴弘との結婚生活で受けた暴力や支配について詳細に語らなければならなかった。
話すたびに胸が締め付けられるような感覚に襲われたが、それでも奈緒は前へ進むことを選んだ。

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