新海に咲く愛
離婚手続きが進む中で、海斗は奈緒を気遣い続けていた。

彼女が施設で生活している間も定期的に連絡を取り、

「困ったことがあればいつでも言ってください」
と伝えていた。

ある日、海斗は奈緒を外へ連れ出すことを提案した。

「少し息抜きしませんか? 外の空気を吸うだけでも気分転換になりますよ。」

最初は戸惑っていた奈緒だったが、海斗の優しい誘いに応じ、公園へ出かけることになった。
木々の緑と穏やかな風――それだけでも彼女の心は少し軽くなった。

「こういう場所、久しぶりです。」

奈緒がそう呟くと、海斗は微笑みながら答えた。

「俺も久しぶりですよ。でも……こうして一緒に来れてよかったです。」

その言葉に奈緒は少し照れくさそうに笑った。
その瞬間、自分の中で何か温かい感情が芽生えていることに気づいた。



数ヶ月後、ついに奈緒と貴弘の離婚が成立した。
弁護士から正式な通知を受け取ったとき、奈緒は涙を流した。それは悲しみではなく、解放された喜びの涙だった。

「これで……終わったんですね。」

その報告を受けた海斗もまた安堵した様子だった。

「本当にお疲れ様でした。これからは新しい人生ですね。」

しかし、その夜、奈緒は一人になった瞬間、不安に襲われた。

「本当にこれでよかったんだろうか?」という疑念――

そして、「私はこれからどう生きていけばいいんだろう?」という迷い。

そんな中で思い浮かぶのはいつも海斗の顔だった。

ある日、海斗は意を決して奈緒を食事に誘った。 
カジュアルなレストランで二人きりになり、少し緊張した様子で話し始める。

「実は……ずっと伝えたいことがあったんです。」

その言葉に奈緒は驚きながらも耳を傾けた。

「俺……ずっと奈緒さんのことが気になってました。最初はただ助けたいと思っていただけだった。でも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて……もっと近くで支えたいと思うようになりました。」 

その真剣な告白に、奈緒の胸は高鳴った。しかし同時に、不安も感じていた。

「私なんかが幸せになっていいんだろうか?」という思い――それでも彼女は勇気を振り絞り、小さく頷いた。

「私も……海斗さんといると安心します。こんな気持ちになったの、本当に久しぶりです。」

二人の距離が一気に縮まる瞬間だった。
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