新海に咲く愛

7.忍び寄る影

奈緒と海斗が新しい生活を始めてから数週間が経った。

奈緒は離婚成立後も不安を抱えていたが、海斗の支えによって少しずつ日常を取り戻そうとしていた。

しかし、その平穏は長くは続かなかった。

貴弘は奈緒の居場所を突き止めるために執拗な嫌がらせを始めた。
最初は匿名で送られてくる脅迫状だった。
「お前は俺のものだ」「逃げられると思うな」
という言葉が並ぶ手紙や、無言電話が奈緒の元に届くたびに彼女は震え上がった。

「海斗さん……また手紙が届きました……」

奈緒が怯えながら手紙を差し出すと、海斗はそれを受け取りながら怒りを抑えるように深呼吸した。

「大丈夫です。警察にも報告しておきます。俺も絶対に奈緒さんを守ります。」

さらに貴弘は尾行まで始めた。
奈緒が買い物へ出かけると、遠くから彼女を見張るような視線を感じることが増えた。

ある日、奈緒は振り返った先で見覚えのある男――貴弘の部下だった男――と目が合い、恐怖でその場から走り去った。

「また見張られている気がします……」

奈緒の言葉に海斗は拳を握りしめながら答えた。

「もう許さない。絶対にこいつらを追い詰めてやる。」

しかし、貴弘は直接的な接触には慎重だった。
自分の立場や世間体を守るため、表向きには何も問題のないよう装っていた。
その一方で、奈緒への執着心は日に日に増していき、「どうしても直接話す必要がある」と考えるようになった。
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