新海に咲く愛
ある夜、貴弘はついに行動を起こした。
奈緒が通うスイミングスクールに忍び込み、人目につかない隠れた場所で彼女と接触する計画だった。

その日、奈緒は久しぶりにスイミングのレッスンへ参加していた。プールサイドで準備運動をしているときもどこか落ち着かない様子だった。

「大丈夫ですか? 無理しないでくださいね。」

海斗の声に奈緒は小さく頷いた。

「ありがとうございます。でも……なんだか今日は変な感じがします。」

その予感は的中した。レッスン終了後、更衣室へ向かう途中で貴弘が現れた。
彼は建物内の隠れた一角から姿を現し、奈緒の腕を掴んだ。

「やっと会えたな。」

低い声で囁く貴弘。その瞬間、奈緒の顔から血の気が引いた。

「……どうしてここに……」

「お前と話すためだよ。逃げられると思ったか?」
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