新海に咲く愛

8.新しい生活

奈緒と海斗は少しずつ新しい生活を築いていった。
奈緒は事件後もしばらく療養していたが、海斗の支えのおかげで少しずつ笑顔を取り戻していった。

ある日、二人で散歩しているとき、奈緒がふと立ち止まり、小さな声で言った。

「私……ずっと怖かった。でも今こうして歩いていると……少しだけ自由になれた気がします。」

海斗は立ち止まり、彼女の顔を見つめながら答えた。

「それでいいんです。一歩一歩進んでいけばいい。それに……俺も一緒ですから。」

その言葉に奈緒は涙ぐみながら微笑んだ。
「ありがとうございます。本当に……」











奈緒と海斗が交際を始めてから1年が経とうとしていた。 
  
奈緒は少しずつ新しい生活に慣れ、笑顔を見せることも増えてきたが、彼女の中にはまだ過去の傷が完全には癒えない部分が残っていた。
それでも、海斗と一緒にいる時間は彼女にとってかけがえのないものだった。
ある日、海斗は山崎と食事をしながら、奈緒へのプロポーズについて相談していた。

「山崎、俺……奈緒さんにプロポーズしようと思うんだ。」

山崎は驚いたように目を見開きながらも、すぐに笑顔を浮かべた。

「お前、本気だな。まあ、奈緒さんならお前にはもったいないくらいだしな。」 

「おい、それ褒めてるのか?」

海斗が苦笑すると、山崎は肩をすくめた。 

「まあ冗談だ。でも、お前が本気で幸せにしたいと思ってるなら、全力で応援するよ。ただ……奈緒さん自身、まだ過去のことを完全に乗り越えたわけじゃないだろ? そこもちゃんと考えてやれよ。」

その言葉に海斗は真剣な表情で頷いた。

「もちろんだ。俺は彼女が安心して前を向けるように支え続けたい。それが俺の役目だと思ってる。」
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