新海に咲く愛
プロポーズの日取りを決めた海斗は、奈緒を夕食に誘った。
彼女の好きな花であるカスミソウを飾ったレストランの個室を予約し、その場で気持ちを伝えるつもりだった。

その日、奈緒は少し緊張した様子でレストランへ向かった。
普段よりも少しだけおしゃれなワンピース姿で現れた彼女を見て、海斗は思わず見惚れてしまった。

「奈緒さん……今日は来てくれてありがとう。すごく似合ってますよ、その服。」

「ありがとうございます……でも、なんだか少し緊張します。」

奈緒がそう言うと、海斗は微笑みながら

「大丈夫です。今日はただ、一緒に美味しいものを食べましょう」と答えた。


食事が進む中で、二人はこれまでの出来事について話した。奈緒はふと遠くを見るような目で呟いた。

「私……あの時、本当にもう終わりだと思ってました。でもこうして今、生きていられるのは海斗さんのおかげです。」

その言葉に海斗は一瞬言葉を失った。そして意を決して、小さな箱を取り出した。


「奈緒さん……実は今日、お伝えしたいことがあります。」

そう言って海斗は椅子から立ち上がり、真剣な眼差しで奈緒を見つめた。
そして、小さな箱を開け、中から指輪を取り出した。

「俺……ずっと奈緒さんと一緒にいたいと思っています。最初はただ助けたいという気持ちだけでした。でも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、それ以上の気持ちになりました。」

奈緒は驚きながらも、その言葉に耳を傾けていた。
海斗の声にはこれまで聞いたことがないほどの真剣さと温かさが込められていた。

「これから先もずっと……俺と一緒にいてください。奈緒さんを幸せにするためなら何でもします。一生守ります。」

その言葉に奈緒の目には涙が浮かんだ。そして震える声で答えた。

「私……こんな私でもいいんですか? 過去もあって、自分でも自信がなくて……それでも?」

海斗は力強く頷いた。

「もちろんです。過去も含めて全部ひっくるめて奈緒さんなんです。それが俺には大切なんです。」

奈緒は涙を拭いながら、小さく頷いた。
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