新海に咲く愛
数日後、奈緒は久しぶりに買い物へ出かけた。
少しでも気分転換になればと思い、海斗も送り出したものの、
「何かあればすぐ連絡して」
と言葉を添えることを忘れなかった。



しかし、その帰り道――



「よお、久しぶりだな。」

突然背後から聞こえた低い声。
その瞬間、奈緒の体は凍りついた。振り返るとそこには貴弘が立っていた。

「……どうして……ここに……」

奈緒の声は震えていた。

「どうして? そんなの決まってるだろ。お前を連れ戻すためだよ。」

貴弘は冷たい笑みを浮かべながら一歩近づいてきた。その目には狂気が宿っており、奈緒は恐怖で後ずさった。

「もうやめてください……私には新しい生活があります……」

「新しい生活? ふざけるな! お前は俺のものだ!」

その言葉と共に貴弘は奈緒の腕を掴んだ。
その力強さに奈緒は抵抗できず、その場で立ち尽くすしかなかった。



その瞬間――




「離れろ!」


怒鳴り声と共に現れたのは海斗だった。
彼は山崎から連絡を受け、不審者情報を追って奈緒を探していた。

貴弘は驚きながらもすぐに表情を歪め、
「邪魔するな」と低く唸った。

しかし海斗は怯むことなく貴弘と向き合った。 

「もう終わりだ。お前が何をしようと奈緒には近づけさせない。」

その言葉に貴弘は一瞬怯んだものの、
「お前なんかに負けるわけない」と再び威圧的な態度を取った。

しかしその時――

「警察だ! 動くな!」

山崎率いる警察官たちが現場へ駆けつけた。
貴弘は逃げようとしたものの、その場で取り押さえられた。
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