新海に咲く愛
妊娠5ヶ月目に入った頃、奈緒のお腹も少しずつ膨らみ始めていた。

ある夜、二人でソファに座ってテレビを見ている時、奈緒がお腹に手を当てながら驚いた表情を浮かべた。

「どうした？」

海斗が尋ねると、奈緒は嬉しそうに微笑みながら答えた。

「赤ちゃん……動きました。」

その言葉に海斗も目を見開き、「マジか！？」と言いながら奈緒のお腹に手を当てた。

しかし、その時は何も感じられず、

「あれ？ もう一回動いてくれないかな」と真剣な顔で話しかけ始めた。

「おーい、お父さんだぞー。動いてみろー。」

その姿に奈緒は思わず笑ってしまった。

「そんな簡単には動いてくれませんよ。でも……すごく嬉しいです。」

「俺もだよ。なんか実感湧いてきたな。」

海斗は穏やかな表情でそう言いながら、お腹越しにそっと手を添え続けた。



妊娠8ヶ月目――



ある日、二人は赤ちゃんの名前について話し合っていた。リビングテーブルには名前辞典やノートが広げられている。

「女の子だったらどうする？」

海斗が尋ねると、奈緒は少し考え込んだ後、

「優しい響きの名前がいいですね」と答えた。

「例えば？」

「そうですね……『咲』とか、『陽菜』とか……」

「いいじゃん。それなら俺、『咲』って名前好きだな。
なんかこう……明るくて元気な感じするし。」

その言葉に奈緒も頷いた。

「私もそう思います。じゃあ『咲』ちゃんで決まりですね。」

二人で名前を書き留めながら、お互い微笑み合う。
その時間だけで幸せが満ち溢れているようだった。
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