新海に咲く愛
近くを通りかかった人が倒れている奈緒を見つけ、すぐに救急車を呼んだ。

救急隊員たちは到着するとすぐに彼女の容態を確認し、大急ぎで病院へ搬送した。

「妊婦さんです! お腹の赤ちゃんも危険な状態かもしれません!」

救急車内では隊員たちが必死で彼女の命を繋ぎ止めようとしていた。

意識が朦朧とする中でも、奈緒はお腹を押さえながら小さく呟いていた。

「赤ちゃんだけは……助けてください……」

その声に応えるように隊員たちはさらに迅速な処置を進めていった。


その頃、自宅で仕事の資料を整理していた海斗のスマホが鳴った。
画面を見ると知らない番号だったが、不安な胸騒ぎを感じながら電話を取った。

「もしもし?」

『こちら○○病院ですが、中村奈緒さんのご家族の方でしょうか?』

その言葉に海斗の心臓が一気に跳ね上がった。

「はい、そうです! 妻がどうかしましたか!?」

『奥様ですが、先ほど階段から転落され非常に危険な状態です。現在救急搬送されており、お腹のお子様にもリスクがあります。至急病院までお越しください。』

その言葉を聞いた瞬間、海斗の手からスマホが滑り落ちそうになった。
「危険」という言葉だけが頭の中で何度も反響する。

「わかりました! 今すぐ向かいます!」

電話を切ると同時にコートを掴み、大慌てで家を飛び出した。
車に乗り込むとアクセルを踏み込みながら、自分自身に言い聞かせるように呟いた。

「頼む……頼むから無事でいてくれ……!」
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