新海に咲く愛
病院に到着した海斗は、受付で奈緒の容態を聞くと、すぐに手術室前へ案内された。

そこには医師が待っており、深刻な表情で説明を始めた。

「奥様ですが、階段からの転落による衝撃でお腹に強い負担がかかっています。現在、赤ちゃんは無事ですが、奥様の状態が非常に不安定です。大量出血もあり、これ以上の容態悪化が懸念されます。」

その言葉に海斗は拳を握りしめながら答えた。

「……お願いします。二人とも助けてください!」

医師は頷きながら、「全力を尽くします」と告げると、そのまま手術室へ戻っていった。

海斗は廊下の椅子に座り込むと、頭を抱えながら祈るように呟いた。 

「奈緒……頼む……無事でいてくれ……」

時間だけが過ぎていく中、彼の頭にはこれまでの日々や奈緒との思い出ばかりが浮かんでいた。

初めて出会った時のこと、彼女が笑顔を見せてくれた瞬間――そして、二人で新しい命を迎える準備をしていた日々。

「俺にはお前しかいないんだ……絶対に戻ってきてくれよ……」


手術室内では、医師たちが必死に奈緒の容態を安定させようとしていた。しかし、大量出血によるショック状態で彼女の心拍数はどんどん低下していった。

「血圧が下がっています! 心拍数も……」 

「まずい……心停止だ! 心臓マッサージ開始!」

その声と共に医師たちは迅速に処置を進めたが、奈緒の意識は戻らない。
さらに時間が経つにつれ、お腹の赤ちゃんにもリスクが及ぶ可能性が高まっていた。

「このままでは母体も胎児も危険だ……死戦期帝王切開を行うしかない!」

医師たちはすぐさま準備を整え、手術に取り掛かった。
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