【短】卒業〜新井かんなの場合〜
私は7歳から15歳まで施設で育った。
両親はネグレストで、私の養育に適さないと見なされての措置だった。
おかげで両親に愛された記憶はなく、あるのは自分を冷たく見下ろす大人の記憶だけ。
施設での生活は衣食住が揃っていて、特段困ることも不快なこともなかった。
でも学校でも施設でも、人と深く関わり合う事はなかった。
中学卒業と同時に今の里親に引き取られたけれど、そこでも心を開く事はなかった。
義両親は優しく人格者で、そんな私に無理強いすることなく距離を保って接してくれた。
彼らの期待に応えられない事が心苦しくはあったけれど、せめて自慢できる娘になる努力はしようと勉強を頑張ったら、その甲斐あって大学に進む事が出来た。
一人暮らしの費用も出してくれて、彼らには感謝している。
自分に出来ることは勉強を頑張ることと、せめて少しでも義両親の負担を減らす為にバイトに勤しむことくらいだった。
そんな私の世界に突然踏み入ってきた男。
私の顔は男受けするらしく、言い寄ってくる男は昔から一定数いた。
彼らにお断りの返事をする度に、冷たいだのもっと言い方はないのかだのと好き勝手な事を言われる。
勝手に言い寄ってきておいて、振られたからといちゃもんをつけるのはやめて欲しい。
だから男は嫌いだった。
なのにこの男の手を取ってしまった。
付き合ってくれと言われる訳ではない。
だから断る事もない。
熱を分け合っている時間は目の前の行為に夢中で、余計な事は一切考える必要がなかった。
ただ、一緒に過ごす時間が増える度、彼の眼差しが甘さを増す度、空虚だった自分の中が満たされていく事実は見ない振りをした。
いつしか今の関係に寂しさを覚えるようになってしまった事にも、気付かない振りをした。
両親はネグレストで、私の養育に適さないと見なされての措置だった。
おかげで両親に愛された記憶はなく、あるのは自分を冷たく見下ろす大人の記憶だけ。
施設での生活は衣食住が揃っていて、特段困ることも不快なこともなかった。
でも学校でも施設でも、人と深く関わり合う事はなかった。
中学卒業と同時に今の里親に引き取られたけれど、そこでも心を開く事はなかった。
義両親は優しく人格者で、そんな私に無理強いすることなく距離を保って接してくれた。
彼らの期待に応えられない事が心苦しくはあったけれど、せめて自慢できる娘になる努力はしようと勉強を頑張ったら、その甲斐あって大学に進む事が出来た。
一人暮らしの費用も出してくれて、彼らには感謝している。
自分に出来ることは勉強を頑張ることと、せめて少しでも義両親の負担を減らす為にバイトに勤しむことくらいだった。
そんな私の世界に突然踏み入ってきた男。
私の顔は男受けするらしく、言い寄ってくる男は昔から一定数いた。
彼らにお断りの返事をする度に、冷たいだのもっと言い方はないのかだのと好き勝手な事を言われる。
勝手に言い寄ってきておいて、振られたからといちゃもんをつけるのはやめて欲しい。
だから男は嫌いだった。
なのにこの男の手を取ってしまった。
付き合ってくれと言われる訳ではない。
だから断る事もない。
熱を分け合っている時間は目の前の行為に夢中で、余計な事は一切考える必要がなかった。
ただ、一緒に過ごす時間が増える度、彼の眼差しが甘さを増す度、空虚だった自分の中が満たされていく事実は見ない振りをした。
いつしか今の関係に寂しさを覚えるようになってしまった事にも、気付かない振りをした。