【短】卒業〜新井かんなの場合〜
前日
「もう明日は卒業式かあ」
目の前で理子がコーヒーにミルクを入れながらぼやく。
「理子ちゃんは彼氏もいるし順風満帆の門出じゃない」
微笑みながらそう言うのは及川雫。
「ああ〜、まあね」と理子が目をふせて答えるが、何となく歯切れが悪い。
何かあったのかと気にはなったがあえて触れない。
皆それぞれ色々な事情があるのだろう。
「かんなちゃんはあんなにモテても遂に彼氏作らなかったね」
話の矛先がこちらに飛んできて飲んでいたコーヒーを吹きそうになるが、すんでのところで耐える。
「私のお眼鏡に叶う男がいなかっただけ」
「かんなったら会話さえ必要最低限なんだもん。ガードが固すぎるって男達嘆いてたわよ」
「そうそう。でも、男の子達にはそんなミステリアスなところも良かったみたいで、何人かはファンを通り越して信奉者みたいだったよね」
「別に彼氏を作りに学校にきてるわけじゃないから」
だと言うのに何故あの男と今のような関係になってしまったんだろうかと考える。
こうゆうのをセフレって言うんだろうな。
今まであえて言葉にしてこなかった単語が頭に浮かんでは消えてゆく。
目の前の友人達には、私とあの男の関係の話はしていない。
快楽に流されて刹那的に身体を重ねる今の関係が建設的ではないことは充分わかっている。
だがあの雨の日の事を思い返すと、多分自分は何度だってあの手をとってしまうんだろうなという確信だけはあった。
目の前で理子がコーヒーにミルクを入れながらぼやく。
「理子ちゃんは彼氏もいるし順風満帆の門出じゃない」
微笑みながらそう言うのは及川雫。
「ああ〜、まあね」と理子が目をふせて答えるが、何となく歯切れが悪い。
何かあったのかと気にはなったがあえて触れない。
皆それぞれ色々な事情があるのだろう。
「かんなちゃんはあんなにモテても遂に彼氏作らなかったね」
話の矛先がこちらに飛んできて飲んでいたコーヒーを吹きそうになるが、すんでのところで耐える。
「私のお眼鏡に叶う男がいなかっただけ」
「かんなったら会話さえ必要最低限なんだもん。ガードが固すぎるって男達嘆いてたわよ」
「そうそう。でも、男の子達にはそんなミステリアスなところも良かったみたいで、何人かはファンを通り越して信奉者みたいだったよね」
「別に彼氏を作りに学校にきてるわけじゃないから」
だと言うのに何故あの男と今のような関係になってしまったんだろうかと考える。
こうゆうのをセフレって言うんだろうな。
今まであえて言葉にしてこなかった単語が頭に浮かんでは消えてゆく。
目の前の友人達には、私とあの男の関係の話はしていない。
快楽に流されて刹那的に身体を重ねる今の関係が建設的ではないことは充分わかっている。
だがあの雨の日の事を思い返すと、多分自分は何度だってあの手をとってしまうんだろうなという確信だけはあった。