【短】卒業〜新井かんなの場合〜
当日
卒業式当日。
色とりどりの衣装に身を包んだ学友達と並んで、私は卒業証書を受け取った。
4年間の出来事が頭を駆け巡るが、良くも悪くも1番の思い出はあの男と一緒に過ごした研究室での日々だ。
自分の興味のある研究は面白かったし、あの男と憎まれ口を叩き合う事も普段人とあまり交流しない私にとってはいい刺激になって楽しかったんだと今になって思う。
一緒に過ごした夜の事まで思い出しそうになって慌てて頭を振る。
彼とのことは、今日をもって卒業するんだ。
今の関係に明るい未来を見出すことは出来ない。
外は晴れ渡って気持ちいいほどの快晴なのに、心の中は曇天のように重いものがずしりと存在しているような気がして、感情が乏しい自分が随分と感傷的になっているようだと思わず苦笑する。
「卒業おめでとう」
ふいにかけられた声に、振り向かなくてもそれが誰だかわかってしまった。
艶のある甘いテノール。どうせまた人を小馬鹿にしたように口元には笑みを浮かべているのだろう。
「ありがとうございます。」
言いながら振り返って相手を見れば、思わずギョッとしてしまった。
彼が特大の花束を抱えて立っていたからだ。
予想に反して口元もへの字に曲がっている。
聞きたい事はいくつかあるが、とりあえずは
「……それは何ですか?」
「可愛くない卒業生に祝いの花束だけど」
「あなたが抱えてるとなんだかまるでホストみたいですね。……どっかの女子にでももらったのかと思いました。」
「生憎卒業するのは俺じゃないんでね。ほら、受け取って」
言いながら花束を押し付けてくる。
「私に?……ありがとうございます…。こんな大きな花束、高かったでしょうに」
可愛くない卒業生とはどうやら私の事らしい。
予想外の展開に頭がついていかない私は、気付いたらそんな事を口走っていた。
色とりどりの衣装に身を包んだ学友達と並んで、私は卒業証書を受け取った。
4年間の出来事が頭を駆け巡るが、良くも悪くも1番の思い出はあの男と一緒に過ごした研究室での日々だ。
自分の興味のある研究は面白かったし、あの男と憎まれ口を叩き合う事も普段人とあまり交流しない私にとってはいい刺激になって楽しかったんだと今になって思う。
一緒に過ごした夜の事まで思い出しそうになって慌てて頭を振る。
彼とのことは、今日をもって卒業するんだ。
今の関係に明るい未来を見出すことは出来ない。
外は晴れ渡って気持ちいいほどの快晴なのに、心の中は曇天のように重いものがずしりと存在しているような気がして、感情が乏しい自分が随分と感傷的になっているようだと思わず苦笑する。
「卒業おめでとう」
ふいにかけられた声に、振り向かなくてもそれが誰だかわかってしまった。
艶のある甘いテノール。どうせまた人を小馬鹿にしたように口元には笑みを浮かべているのだろう。
「ありがとうございます。」
言いながら振り返って相手を見れば、思わずギョッとしてしまった。
彼が特大の花束を抱えて立っていたからだ。
予想に反して口元もへの字に曲がっている。
聞きたい事はいくつかあるが、とりあえずは
「……それは何ですか?」
「可愛くない卒業生に祝いの花束だけど」
「あなたが抱えてるとなんだかまるでホストみたいですね。……どっかの女子にでももらったのかと思いました。」
「生憎卒業するのは俺じゃないんでね。ほら、受け取って」
言いながら花束を押し付けてくる。
「私に?……ありがとうございます…。こんな大きな花束、高かったでしょうに」
可愛くない卒業生とはどうやら私の事らしい。
予想外の展開に頭がついていかない私は、気付いたらそんな事を口走っていた。