甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
爽の言葉に、握らされた封筒の中身がお金であることを悟って爽の胸元に押し返す。


「受け取れない」

「俺なりのケジメのつもりだから、受け取って」


爽の手が、私の手を押し返す。

それが妙に私の心の中の古傷を抉ってきて、封筒を握り締める手に力が篭ってしまう。


「ケジメって、何?爽のただの自己満足でしょ」


お金は返せても、時間や感情は決して戻らない。

何度も期待を裏切られて心を引き裂かれるような想いをしたことも、爽が爽でなくなっていく日々の中で抱いた喪失感や絶望感も、私の中に深く刻み込まれた傷が消えることは一生ない。
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