甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
ただ、爽と過ごした時間は長すぎた。

私の中で渦巻く感情はそう単純なものではなく、言葉にもしきれなくて涙が滲む。


慌てて空を見上げるようにして涙を堪えると、私の手の上に向井くんの手が重なりハンカチを握らされた。


「…出た、イケメン」

「いらないなら返せ」

「いる、ありがとう」


向井くんとのやりとりに笑みを溢しながら、目頭にそっとハンカチを添えて涙を拭う。

身体は冬の外気で冷え切ったはずなのに、心の奥に小さく優しいあかりが灯されたような夜だった。
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