最後の旋律を君に

輝くイルミネーションの下で

律歌が学校を終え、いつものように奏希のお見舞いに向かおうとしていたその時、スマホが震えた。
画面には「奏希くん」の名前が表示されている。

 「珍しいな……」

 普段なら、奏希くんが律歌に電話をかけてくることは少ない。
 何かあったのだろうかと、少しの不安を抱えながら通話ボタンを押した。

 「もしもし、律歌?」

 電話の向こうからは、柔らかくもどこか弾んだような奏希の声が聞こえてきた。

 「うん、どうしたの?」

 「……実はね、先生から正式に外出許可が出たんだ」

 「えっ、本当に!?」

 思わず声を上げてしまい、周りにいた生徒たちがちらりとこちらを見た。
 それでも律歌はそんなことを気にする余裕もなく、胸の高鳴りを抑えられなかった。

 「うん。長時間じゃないけど、短い時間なら病院の外に出てもいいって」

 「すごい……! 良かったね、奏希くん!」

 嬉しさが込み上げて、スマホをぎゅっと握る。奏希くんが病院から出られる日が来るなんて、まるで夢のようだった。

 「それでさ、よかったら……律歌、僕と一緒に外出しない?」

 その言葉に、律歌の心はさらに高鳴る。

 「もちろん! どこに行きたい?」

 「そうだな……あまり遠くには行けないけど、律歌が行きたいところがあるなら、そこでもいいよ」

 律歌は少し考えた後、ふとショッピングモールのイルミネーションのことを思い出した。

 「じゃあ、夜のイルミネーションを見に行かない?」

 「イルミネーション?」

 「うん、ちょうど今の時期、すごく綺麗だって聞いたから……。奏希くんにも見てほしいなって」

 電話の向こうで、小さく笑う声が聞こえた。

 「いいね、僕も楽しみだ」

 約束を交わし、電話を切る。

 律歌は胸に手を当てながら、今までになく心が温かくなるのを感じていた。
 奏希くんと一緒に過ごせる時間が、少しずつ増えていく。

 その一歩が、今、確かに始まった。
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