どん底貧乏美女は夢をあきらめない
引っ越しも終わり榊はその夜美玖の作った夕飯を食べながら、

「なあ美玖、恋人なんだから大吾って
呼ばないと、代表なんて言ってたら
怪しまれるよ」

「ええ~っ、そんなこと急に
言われても、照れます」

「でも、練習しとかないと呼んでみて。」

「うう~っ、だ・い・ごさん?」

「なんで、そんなに力込めて疑問形に
なってんの?外人みたいだよ」

と言って大笑いした。

「わかりましたよ。大吾さん。
これでいいですよね?」

「なんかとってつけたようだけど、
慣れるまで頑張って呼んでみて」

「わかりました。でも事務所や
仕事中は代表でいいですよね?」

うん、まあ仕方ないか。ほんとは
ずっと大吾でいいんだけど…」

最後の方は、キッチンに片づけに行ってしまった美玖には聞こえていなかった。

大吾はこの機会に外堀を埋めてもう美玖をこの部屋から出すつもりはなかった。

美玖が求人の応募で面接に来た時から魅かれていたのだ。

クールビューテイに見えるのに実際はざっくばらんで純粋な気持ちの優しい女性だ。

その上料理が抜群に美味しい、節約料理だというが野菜をたっぷりと使った煮物や炒め物揚げ物まで野菜中心なのだ。

給料日の後は豪華にハンバーグやトンカツに生姜焼きなどの肉料理も作ってくれる。

食費として別にお金を渡すと言っても野菜は実家や祖母から送ってくるのでいらないと言って受け取ろうとはしない。

住む所も与えてもらって光熱費も取ってくれないので、それ以上お金をもらったら罰が当たると、年寄りじみた事を言っている。
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