どん底貧乏美女は夢をあきらめない
その夜は、美玖のお疲れさん会だと言って大吾は、ホテル・ラ・ルミエール東京のフレンチレストランに連れて行ってくれた。

上階にあるレストランで東京の夜景を楽しみながら美味しいフレンチ料理を堪能した。

でも、料理好きの美玖は味の研究にも余念がない。

ホタテと旬の野菜の炒め物に合わせてある独特のソースの味に感心して、これは何が入っているのかと、何度も何度もソースをなめてチェックしている。

そんな美玖を見て

「美玖、いい加減にして料理を食べろよ。
ソースばかりなめてるじゃないか。
料理が冷めてしまうぞ」

「あっ、そうでした。こんなに美味しい
お料理を作ってくださっているシェフに
申し訳ないですね。
温かいものは温かいうちに
頂かないと失礼ですよね」

料理に合わせて出されるワインも極上で、美玖はすっかりいい気分に酔ってしまっていた。

でも、しっかりとデザートまで味わってお母様の言っていたラ・ルミエール東京のケーキってほんとに美味しいと、ニコニコして食べている美玖を愛おしそうに見つめる大吾の眼差しにまだ気づかない美玖だった。

「でも、大吾さんのお母様ってホントに
美しくって可愛い性格の素敵な女性ですね。
何の悪意も持たず持たれず今まで
生きてきたみたいな純粋な方ですよね。
そんなお母様を騙してる私達に、
絶対罰が当たりますよ。
どうしてくれるんですか!」

「でも、二人ともすごく楽しそうで
喜んでいたから、いいんだよ。
あのお袋がクッキー作ったなんて
明日嵐が来るぞ。とにかく家で何か
作って食べさせてもらった事ないからな
俺も弟も…俺たちは家政婦の駒子さんの
料理で育ったんだ。子育てもほとんど
任せっぱなしで授業参観や父母会とか
そういう時は来るけれど、親子遠足や
運動会は陽に焼けるから嫌って言って
こないんだ。いつも駒子さんが
お弁当持って来てくれたよ」

「でも、そうやって気を付けていたから、
今でもシミ一つないきれいなお肌で、
若々しくて、うちの母親より年上って
信じられないわ。うちの母親なんて、
毎日畑に出ているから汗かくし
化粧もしないの。手はごわごわで
母の手って感じで、だからいつも
母の日にはハンドクリーム送るのよ。
ちょっと高いけどフランスの
オーガニックのでとてもすっきりとした
いい匂いがするのよ」
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