キミと桜を両手に持つ

 「日本に帰国したあの日に出会ってからずっと君に惹かれてた。一緒に暮らそうって言ったのも、もう君を手放す事ができなかったからだ。本当は何度も自分の気持ちを伝えたかった。でも君は失恋したばかりで傷が癒えるまで時間をあげたかった。でももう待てない。凛桜、君が好きだ。今すぐ君が欲しい」

 そっと右手を持ち上げて藤堂さんの綺麗な顔に触れると、彼は顔を傾けて私の指先に優しくキスをした。

 ……私達ってあの日出会った時からずっと同じ気持ちだったんだ……

 でも藤堂さんは私の心の整理がつくまでこうして愛情を注ぎながらずっと大切に待っていてくれた。

 彼の優しい思いやりに再び涙腺が緩み涙がポロリと零れ落ちる。

 大好きな人が自分を好きになってくれる確率は奇跡に近い。それが彼みたいな魅力的な人なら尚更だと思う。そんな彼が私をずっと好きでいてくれた。この気持ちに気付くまで側にいてずっと見守っててくれた──…

 私は自分の気持ちを早く伝えたくて彼を見上げた。


 「私もあの日からずっと藤堂さんが好きです……」


 彼は愛おしそうに目を細めて私を見つめると「俺の凛桜」と呟いて腕の中に包み込んだ。そしてまるで宝物にでも触れるかのように私の頬を指先で優しく撫でて涙を拭いた。


 彼の顔がゆっくりと近づいてきて私達は自然に唇を重ね合わせた。彼の啄むような優しいキスにうっとりとして身を委ねる。でももっと欲しくなって背伸びをして彼の首にしがみつくと、藤堂さんはキスを深めながら私を強く抱きしめた。

 「ん……」

 彼は深い情熱的なキスを何度も繰り返す。しばらくそのキスに夢中になっていると、藤堂さんは色っぽい吐息を漏らしながら囁いた。

 「今すぐ家に帰りたい……」

 それを聞いた私はふふっと微笑むと、甘えるように彼に抱きついてチュッと軽く頬にキスをした。

 「まずはこの部屋から脱出しないと、ですね」

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