キミと桜を両手に持つ
「……凛桜……」
私を呼ぶ優しい声がして顔を上げる。藤堂さんはまるで愛しい者でも見るように慈しみを含んだ、それでいてとても切ない目で私を見つめてくる。
その瞳に吸い込まれる様に見入っていると、彼の大きな手が私の顔に伸びてきてするりと頬を優しく包み込んだ。あたたかくて優しい彼の手……。その手に甘えるように目を閉じて頬を寄せる。
ドキドキするのに心がとても安らぐ──…。まるで彼にこうして触れられる事が当たり前のよう。
彼に触れられるとオフィスで一人ぼっちで悲しかった時も、風邪を引いて具合が悪かった時も、こうして楽しく遊んでいる時も、いつでも心がホッとする。
突然、彼にもっと深く触れてほしい……彼とずっとこうして共に在りたい……、そういった感情が一気に自分の中から溢れ出てくる。
ずっと彼と同居生活をしていてあまりにも近すぎて今まで気づかなかったのかもしれない。もしくは失恋した直後で藤堂さんにあっけなく恋をしたことに気づかないようにしていたのかもしれない。
でも今こうして思い返してみると、彼とマンションで出会ったあの春の日から私はずっと彼に惹かれていた。
「凛桜、俺を見て」
そっと目を開けると真正面から藤堂さんは真剣な眼差しで私を射抜いてくる。
初恋の相手、今まで好きになった人、和真の顔さえも全く思い出せないほど私の中は彼でいっぱいになる。
……わたし、藤堂さんが好きなんだ──…
藤堂さんは震える息を大きく吸い込むと、コツンと私と額を重ねた。
「……凛桜、好きだよ」
もしそうであったらいいなと淡い期待を抱いていた言葉が彼の口から囁かれ、目の前が涙で霞んでくる。