キミと桜を両手に持つ
藤堂さんは私の所へ帰ってくる為に一生懸命頑張っている。私も頑張ってこのミーティングを無事に終わらせようと思い顔を上げると辺りを見回した。
「遠坂くん遅いね。どうしたんだろ。ちょっと電話してみようか」
スマホに表示された時刻を見て眉根を寄せる。先ほどから辺りを見回しているけどもっさり頭の遠坂くんが何処にも見当たらない。
「あのー、俺ならさっきからずっとここにいますけど」
突然私と花梨ちゃんがここにくる前からいた若いホスト風の男性が声をかけてきた。
長い前髪をワックスか何かで後ろに撫で付けていて、両耳には大量のピアス、フォーマルに近いカジュアルスーツを着た二十歳ぐらいのものすごい美男子が立っている。
「あの、どちら様でしょうか……?」
新手の客引きかと思い注意深く尋ねると、男性は顔を顰めた。
「遠坂です。ずっと如月さんと皐月さんが来るの待ってたんですけど」
「ええっ?遠坂くん!?」
遠坂くんってこんな顔してたの!?ってかまだ学生さん!?
あまりにも驚きすぎてしばし目をパチパチと瞬いてから耳にある大量のピアスに視線を移した。
……これ、大丈夫かな……
うちは外資だしかなり自由な社風があってこれでも問題ないけどアグノスでは大丈夫だろうか?
気になってチラリと花梨ちゃんをみると彼女も同じ心配をしているのか私をチラリと見た。
「遠坂くん、もうちょっと耳を隠した方がかっこいいかなって思うんだけど、どうかな……?」
「そうですか?」
そう言って遠坂くんは髪を乱雑にグシャリと手櫛でかき下ろした。「あ、そこまでしなくても……」と言いかけるもすでに遅し。
再びもっさり頭になった遠坂くんを呆然と見ていると花梨ちゃんがいきなり私の腕をとった。
「も、もう時間ないです。行きましょう!」
「そうだった。急ごう」
花梨ちゃんに促され我にかえると、私達は急いでアグノスの本社ビルへと入っていった。