キミと桜を両手に持つ

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 会議室に通され緊張して待っていると、ドアが開きゾロゾロと今回のプロジェクトの担当者達が部屋に入ってきた。


 「初めまして。今回のプロジェクトリーダーを担当します、花園香澄です」

 ──えっ…?この人!?

 前田さんが手強いと言っていたのでどんな絶世の美女が現れるのかと思っていただけに目の前に立つ女性に少し拍子抜けしてしまう。

 花園さんは体型も身長も花梨ちゃんと同じぐらいの華奢で小柄な女性。顔は美人というよりはどちらかと言うと可愛らしくて花梨ちゃんよりも幼く見える。でも化粧気もそんなになくて着ている服もごく普通。セミロングの髪は黒くまっすぐでサラサラ。ヘアアイロンでカールしたりパーマをかけたり染めたりしている感じもない。藤堂さんみたいな大人の男性と付き合っていたとは思えない程の純粋無垢な顔立ちや雰囲気をしている。

 「初めまして。ディレクターの如月凛桜と申します」

 気を取り直して名刺を花園さんと交換し、その後私たちは順に彼女のチームの神楽坂さん、鷹取さん、黒澤さんと名刺交換して着席した。

 「この度以前弊社で構築したサイトのデザインを変更して機能追加したいという事ですが、どのようなサイトにしたいとお考えですか?」

 「はい。以前は藤堂さんに構築していただいたのですが今回は──…」

 彼女はそう言いながら新しいサイトへの要望を説明していく。そうしてしばらく彼女とやりとりして、なぜ前田さんが彼女が手強いと言ったのかなんとなくわかってくる。

 彼女はとても柔らかい雰囲気を持っていて、おっとりとしているというか、ふんわりとしているというか、とても優しい人柄だということがよくわかる。そして微笑むとまるでかけ出しのアイドルのように純粋であどけない顔をする。肌も色白でツヤツヤ。まるで純粋培養で育ったピュアな女の子のよう。それにこのチームのメンバーにも好かれていてとても大切にされている。
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