キミと桜を両手に持つ
「初めまして、凛桜さん。美織です」
「初めまして、美織さん」
美織さんはキリッとした表情のとても綺麗な人で、フェミニンなショートカットがとても似合っている。耳には上品なピアスが揺れていていかにも仕事のできそうな素敵な女性。
渉さんは落ち着いた感じの素敵な男性で私にニコリと微笑んで会釈をした。私も同じように渉さんに会釈をする。琴音ちゃんと琴葉ちゃんは先程からずっと清花さんにベッタリとくっついてるかわいい女の子達。
「そして、最後に俺の親父の卓」
藤堂さんのお父さんは彼が歳をとったらこんな感じになるのかなと思うような背の高くガッチリしたダンディーな男性。にこやかな笑顔の奥には物事を一瞬に見極めてしまいそうな鋭さと判断力を備えていそうなとても知的に見える人だ。
「凛桜さん、藤堂家にようこそ。随分と賑やかな大家族で驚いただろう」
藤堂さんのお父さんはそう言ってクスクス笑うと足元に纏わりついている孫達の頭を撫でた。
「賑やかなのは大好きです。この度はお招きいただき本当にありがとうございます」
私はすこし緊張した面持ちで彼に頭を下げた。
「君達の寝室は三階にある。荷物を置いておいで。もしゆっくりとくつろぎたかったら露天風呂とサウナもあるからいつでも好きな時に使いなさい」
露天風呂にサウナ!すごい!
「はい。ありがとうございます。あの、これ本当につまらないものなんですがよろしければ皆さんで召し上がってください」
と、おずおずと洋菓子の入った紙袋を彼の隣にいる清花さんに差し出した。もう少し高級な物にすればよかったと手渡しながら後悔する。すると先ほどから藤堂さんのご両親の足元にじゃれついてた子供達がお菓子の入った紙袋を見てぱあっと目を輝かせた。
「ありがとうございます。これは食後に皆で食べましょうね」
彼女は笑いながら孫の頭をよしよしと撫でた。