キミと桜を両手に持つ

 それを見た彼の家族全員が一斉に私に視線を向けた。その中に会社で見たことがある顔を見つけて思わず叫びそうになる。

 「ほ、本社の社長!?」
 
 藤堂さんはクツクツ笑って私の肩を抱くと、家族が集まっているリビングへと導いた。

 「凛桜、俺の家族を紹介するよ。一番左から、一番上の兄で泰斗(たいと)、そして奥さんの美咲(みさき)さん、息子の玲央(れお)羅衣(らい)、それと娘の紬」
 
 そう言って藤堂さんは紬ちゃんを床に下ろした。

 「初めまして、凛桜さん。一樹からいろいろと話は聞いてるよ。いつ会わせてもらえるかとドキドキしてたんだ」

 泰斗さんは一樹さんととてもよく似た顔と雰囲気のある40代後半の男性。優しい中にも威厳がある、人の上に立つ独特のオーラのある人だ。

 「初めまして、凛桜です。お会いできて嬉しいです」

 私は彼と彼の家族にお辞儀をする。泰斗さんの隣で美咲さんが「初めまして。よろしくね」と優しく微笑んだ。とても綺麗な人で子供達も美男美女ばかり。

 「凛桜、こっちは俺の一番上の姉で莉愛(りあ)、そして彼女の夫は君も知ってる通りネットアーチ本社の社長、ノア・エバンズ氏、そして娘のライラと息子のルーカス」

 ネットアーチの社長は以前にも会社で見たことはある。でも実際にこうして直接会話をするのは初めて。ノア氏に差し出された手を緊張しながら握って「Great to see you Mr. Evans」と挨拶を交わした。

 「凛桜さん、初めまして。お会いできて本当に良かったわ!」

 社長の隣にいた元気のあるとてもゴージャスでスタイルのいい莉愛さんがいきなり私を抱きしめた。私も彼女の勢いに押されて笑顔でハグを返した。

 彼女の足元には先ほど玄関で見た青い目の可愛い子供達がいて、私はその子達に手を振って微笑む。

 「凛桜、こっちにいるのが俺のもう一人の姉で、美織(みおり)、そして夫の(わたる)さん。娘の琴音(ことね)琴葉(ことは)
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