キミと桜を両手に持つ

 「へー、そうなんだ。しかしびっくりしたわ。でもなんで今日はいきなりあんな格好してるの?」

 今日の遠坂くんはスーツを着ていて、あのいつものもっさり頭も綺麗にセットしている。

 「今日はこれからクライアントに会うんです。アグノスがCM用とウェブ用に写真や動画の撮影をするのでそれを見学しに行くんです。そこでいくつかWeb用のコンテンツ見せてもらえる事になってて」

 「あ、そうなんだ。アグノスどう?順調?」

 「遠坂くんがプログラムの担当してくれてるからものすごく作業が早くて。めちゃくちゃ順調です」

 アグノスの件はとても順調に進んでいる。デザインもアグノスが具体的な案を出してくれていたこともあって全てがスムーズに進み、現在は制作段階も後期に入っている。あとは最終コンテンツをもらってデバッグ・テストに入るだけになっている。

 結局打ち合わせもほぼ全て前田さんが行ってくれたので、今日花園さんと直接会うのは実に三ヶ月ぶり。彼女とは今までメールや電話でのビジネス的なやりとりしかしていなくて、藤堂さんの事を聞かれることもあれからない。

 「ねぇ、さっきから思ってたんだけど何食べてんの?」

 加賀さんは私たちが食べているお菓子を訝しげに見た。ミミズの形をしたグミやストローのような形をした真っ赤なお菓子、それに着色料がばっちり入ったカラフルなキャンディーなどがテーブルの上に沢山広げてある。

 「これ本社のエンジニアからのお土産なんですよ。食べます?」

 花梨ちゃんがそう言って赤いストローのようなTwizzlersというお菓子を一本加賀さんに手渡した。

 「あー、なんか言ってたね。今日から三日間本社からいろいろ来るって」
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