キミと桜を両手に持つ
一番初めのミーティングで会った時も思ったけど、彼はなかなかのイケメン。眼鏡をかけたシャープで綺麗な顔はとてもストイックな印象を受ける。
でも藤堂さんと一つ違うところがあるとすれば、藤堂さんは大人の男という優しさと包容力があるのに対して、神楽坂さんはあの眼鏡の優しそうな顔の奥で何を考えているのかわからない不安定さと言うか神秘的というのかなんとなく掴みどころのない雰囲気がある。
再び栗原さんと森本部長に視線を戻すと、冗談だとは思うけど一応申し出を断った。
「神楽坂さんはとても魅力的な方だと思うんですけど、私には今とても真剣にお付き合いしている男性がいるので……」
「ほらー、如月さんのような綺麗な人にはすでに彼氏がいるんですよ」
「そりゃ、そうだよなー」
栗原さんと森本部長が再び言い合ってると、突然花園さんは穴が開くほど私を見つめながら尋ねてきた。
「あ、あの、お付き合いしてる人って同じ会社の人ですか?」
「え……」
色々な意味でこれはなんと答えたらいいのか言葉に詰まってしまう。ふと隣を見ると花梨ちゃんがニコニコと私を見ている。しばし躊躇ったものの、意を決すると花園さんを真直に見た。
「はい。同じ会社の人です」
「あ、あの、それは同期…の方ですか?」
「いえ、あの、……同期…ではないです。私より6歳年上です」
「……6歳年上……」
花園さんはそう呟いて何か考え込むようにしばし俯いたかと思うと、栗原さんから手渡されたビールを仰ぐように飲み始めた。
「おー、花園さん飲みっぷりいいねぇ。もっと飲む?ほらこれ渡してあげて」
向こうのテーブルから次々とビールが彼女の方にまわってくる。以前花園さんがお酒に弱いと聞いたことを思い出して、おせっかいだと思ったけど私がまだ一度も口をつけていない水の入ったグラスを差し出した。