キミと桜を両手に持つ
「藤堂さんには先日納車させていただいた時にご説明させて頂きましたが、如月さんにも今から車内を簡単にご説明しますね」
そう言って案内されたのはダークグレーの大きなバンタイプの車で、でも普通のバンより高さも広さもあってかなり大きい。
真宮さんがスライドドアを開けると、車内はとても広々としていて全体的に白の色調のとても清潔感ある内装になっている。床と天井部分は木の板貼りになっていて白い家具とのコントラストがとても可愛い。
「どうぞ、中に入ってください」
彼がドアの下からステップを引き出してくれて、それを使って車内に入ると、目の前には小さいけどシンク、電子レンジ、冷蔵庫、それに調理できるスペースのあるキッチンがある。シンクの上には小さな可愛い窓があってそこから外が見えるようになっている。
キッチンの横にはダイニングスペースがあって、二人ずつ向かい合わせに計4人ほど座れる大きさのベンチがある。そのすぐ奥には大人二人が十分に寝れる大きさのベッドがある。車内に大人三人入っていてもそんなに窮屈感はない。しかも高身長の藤堂さんでも屈んだりしなくても大丈夫なほどの高さがある。
ほわぁ──…。まさに動く家!
無いのはトイレとシャワーくらい。それ以外はエアコンも何もかも全て必要なものが揃っている。
「ま、まさか見せたいものってこれですか?」
呆気にとられて車内を見ながら藤堂さんに尋ねた。
「これは凛桜への誕生日プレゼント。これなら年中いつでも何処へでもキャンプに行ける。雨が降っても大丈夫だし、暑い夏でも寒い冬でも快適にキャンプができる。見せたいものは別にあるんだ。それは明日の誕生日まで秘密」
藤堂さんは悪戯っぽく笑いながら私を見た。
「た、誕生日プレゼントぉ!?」
こんな高価な誕生日プレゼントは今までもらった事がない。と言うか10年ぶりにしても、おそらく一生ぶんにしても凄すぎる。