キミと桜を両手に持つ
「絆創膏とか薬とかいっぱい入ってるじゃん!何これ?コンタクトレンズ?何ヶ月分入ってるの?」
「えっと、それは10日分です……。使い捨てだから。このポーチはエマージェンシー用なんです」
だって世の中何が起きるかわからない。大地震がおきて家に帰れなくてコンタクトレンズが無かったら目が見えないし、薬など諸々は突然具合が悪くなった時や怪我をした時の為に常備している。それに昔からよく津波から逃げまどう夢を見るからか、いつも災害時の備えをしてしまう。
「いつも大きなバッグ持ってるから何入ってるんだろうって思ってたんだけど、こんな物入ってたんだ。え?何このタオル?」
「あ、それは今日飲み会があるじゃないですか。それで必要になるかなと思って……」
「あー、藤堂さんと新入社員の歓迎会ね。私ちょっとしか出れないんだけど大丈夫かな」
「大丈夫ですよ。わたしも午後は打ち合わせがあって参加できるのが遅くなりそうだし、色々な事情で参加できない人も何人かいるみたいだし」
それに総務の高橋さんの他にも他の部署から何人か女の子達が参加する予定になっている。もちろん狙いは藤堂さんそして佐伯くんで、花梨ちゃんはぷんぷんと怒っていた。
前田さんに聞いたら彼女達を飲み会に参加させたのは開発部の男の子達らしい。なんだか歓迎会というよりは合コンみたいになるんじゃないかと思ってわたしもあまり気が乗らない。
「ありがとう、これ。有り難くもらうね」
「どうぞ。風邪薬もあるので必要だったらいつでも言ってくださいね」
「ふふっ。今度から非常事態が起きたら必ず如月ちゃんと行動するわ。一番生き残れる確率が高そう」
加賀さんは笑いながら手にしたのど飴をひらひらと振った。