キミと桜を両手に持つ

 「今日の午後打ち合わせになってるな。俺も一緒に行こうか?」

 彼はスケジュール表を引っ張り出すと、苛立たしげに溜息をついた。Nコーポレーションとの打ち合わせの時間と重要な社内ミーティングが重なっている。
 
 「私一人で大丈夫ですよ。今日こそはこの案で通してもらいます。もう時間がないというのは向こうも十分わかっているはずなので。それに今日は歓迎会がありますよね。主役が遅れたら大変ですよ」

 今日化粧室で高橋さんと取り巻きの女の子達を見た。メイクも洋服もかなり力を入れて来ていて、前日にエステにでも行ったのかお肌もツヤツヤ。今夜そんな可愛い女の子達に彼が囲まれるのかと思うとなんだか気が重くなる。

 「えっ?歓迎会って言っても新人の歓迎会だろ?俺は新人じゃないし、別に行かなくても問題なくないか?」

 「ええっ?今日行かないんですか!?」

 あまりのショックに思わず声が上ずった。だ、だってあんなに準備している女の子達はどうなるの…?って言うか皆彼が参加すると思っているんじゃないの……?

 「なんか他の部署からも若い子達が沢山くる合コンみたいになるんだろ?だったら上司がいない方が遠慮がなくていいんじゃないか?」

 「そ、それはそうなのかな……?」

 そうなのか……?なんだかよく分からなくなってくる。

 「凛桜は行くのか?」

 「えっ?私ですか?だって、新人の歓迎会だから一応……?」

 私はてっきり彼が参加するものだとばかり思っていたので出席するつもりだった。

 「そうか……。凛桜が行くなら俺も行くよ」

 彼がそう溜息混じりに言うのを聞いて思わず焦った。

 「えっ、ちょっと待ってください。もし私が行かなかったら藤堂さん行かないんですか?」

 「凛桜が行かないんなら俺が行く必要あるか?」
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