キミと桜を両手に持つ
いかにも当然だと言う藤堂さんを見て、私がこの歓迎会に出席するかしないかで高橋さん達の運命が決まるのかと思うと一気に青ざめた。
「凛桜はどうしたいの?」
「………」
私は一体どうすればいいの……?
確かに藤堂さんが歓迎会に参加しなければ私の心のモヤモヤは解消される。でも高橋さん達だけでなく彼と時間を過ごしたいと思う人は沢山いるはず……。
究極の選択を強いられた私は声を絞り出すように答えた。
「……クライアントとの打ち合わせが終わったら参加します」
でも私はこの決断を数時間後とても後悔することになる。
✿✿✿
「あー、もう今日本当ついてない……」
その日の夕方、私は溜息をつきながら会社のあるオフィスビルへと駆け込んだ。外は先程から大雨。濡れた傘を畳むと傘袋に入れてエレベーターへと向かった。
結局Nコーポレーションとの打ち合わせはうまく纏まらず、デザインも「何かピンとこない」と言われ打ち合わせが終了した。
その帰り道、今度は別のクライアントから電話があって、確認をお願いしていたページが壊れて見えないと言われた。そして急いで帰社する中、今度はそれに追い討ちをかけるかのようなこの大雨。
「あーもうヤダ。靴の中濡れてるし……」
濡れた体をタオルで拭きながらエレベーターから降りると丁度歓迎会に向かおうとしている花梨ちゃんとエレベーターホールで鉢合わせた。