キミと桜を両手に持つ
母に言われた通り、一人でも生きていけるようずっと努力をしてきたし、これからも努力していくつもりだ。いい大学も出たし、今はそこそこいいお給料がもらえる会社で働いている。母が願ったように一人でも生きていけるようになった。
でも私は一人で生きていく為だけにこれからもこんなに頑張らないといけないのだろうか…?
お金の為?仕事の為?それとも老後の為?
藤堂さんと今住んでいるようないいマンションでも買ってみる?
キャリアを積み上げて仕事で成功してみる?
老後一人で優雅に暮らせるよう貯蓄をしてみる…?
でも私の人生って、たったそれだけなの?
それで私は幸せになれるの……?
そんなことを考えていると、なんだかどっと疲れが出てきてパタリと机の上に突っ伏した。
目を閉じると、藤堂さんの周りにいた私とは全く違う高橋さんのような可愛らしい女の子達が沢山いたことを思い出す。
……わたしって本当に藤堂さんの事何も知らないんだな。一緒に同居して仲良くなったからってすごく浮かれてた。馬鹿みたい……
「なんだか、疲れちゃったな……。ちょっとだけ休みたい……」
そう溜息をつくと私はゆっくりと意識を手放した。
✿✿✿
カタカタ……カタカタ……
音が聞こえてきて、徐々に目を覚ました。顔を上げると肩には私を包み込むように大きなジャケットがかけてある。そのジャケットに見覚えがあってガバリと起き上がった。
「と、藤堂さん!?なにやってるんですか?」
慌てて壁にあるデジタル時計を見ると21時半過ぎ。二時間近くも眠っていたみたいだ。
「あの、歓迎会は?もう終わったんですか…?」
よだれ垂らして寝ていなかったよね?と思い慌てて口元を確かめながら藤堂さんのデスクへ歩いた。