キミと桜を両手に持つ

 「あ、これなんかいいかも!」

 デザインが素敵な小さなデスクと椅子が目について近寄って見る。使用されている木材ととてもマッチしたモダンなデザインの家具は、やはり思っていた通り通常私が買うような安い家具とは値段が違う。

 可愛いんだけど、やっぱり値段が高いなぁ。藤堂さんの家に置いてある家具もここのだろうと思うけど、ちょっと私には予算的にきついかも……。

 わざわざ連れてきてもらったものの、どうしようかなと躊躇っていると、突然前方からお店のスタッフが慌ててやってきた。

 「藤堂様!いらっしゃいませ!」

 腰を低くして丁重に挨拶をしているスタッフの男性を見て目を丸くした。

 と、藤堂さんって……何者……??

 「井上さん、お久しぶりです。今日は彼女の家具を買いに来ました」

 「かしこまりました!ただいま店長を呼んで参ります!」

 そう言って走り去っていく井上さんを呆然と見た後、目を丸くしたまま視線を藤堂さんに移した。

 「……あの、藤堂さん……?」

 ここでの家具をいろいろと購入しているからお得意さんなのかもしれないけど、それにしてもどこかのお偉いさんでも見たような対応。もしかして藤堂さんって私が知らないだけでものすごくお金持ちの有名な御曹司だったりする……?

 唖然として藤堂さんを見つめていると彼はクツクツと笑った。

 「実は以前ここのサイトを安く作ってあげたんだ」

 「えっ?ここのサイトを作ったんですか?見たい!」

 「いいよ。そこのQRコードをスキャンしてごらん」

 言われたとおりに家具にぶら下がっているタグにあるQRコードをスマホでスキャンする。出てきたURLをクリックするとブラウザが立ち上がってこのお店のウェブサイトが表示される。
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